2024 3月 08のアーカイブ

第43話 ~幻の左荒線~

 山形県のほぼ中央部を占める白鷹山とその周辺山地。かつてこの山地をぐるっと一回りする内陸環状鉄道の計画があった。山形から寒河江を経て左沢に至る左沢線と、赤湯駅から荒砥へと至る山形鉄道フラワー長井線は、行ったっきりの行き止まり路線(こういうのを盲腸線と言うらしい)となっている。大正中期にこれらが全線開通した直後、引き続き左沢から荒砥間「左荒線」の建設が熱望され、何度も県から国へと請願書が出されている。その文面は、おおむね次の通りであった。(意訳)「本地域には朝日山地の豊富な木材と石材があり、また、沿線地域は養蚕が盛んでその織布も潤沢である。しかし、交通網が貧弱で思うように流通が伸びない。よって、左荒線の整備によりその問題を解決すると共に、仙台~山形~新潟への陸羽横断線が実現でき、国策として非常に利が大きい。」そしてついに、昭和15年完成として整備計画が可決し、一気に左荒線が現実味を帯びてくる。

 ところが丁度その頃、国際情勢が緊張度を増してくる。昭和12年の盧溝橋(ろこうきょう)事件を発端とする日中戦争が開始され、日本はそのまま第二次世界大戦へとなだれ込んでゆく。一旦は決まった左荒線の計画も棚上げとなり、戦後の復興期においても対応が後回しとなってしまう。昭和30年代以降、モータリゼーションの台頭と共に活動が次第に下火となり、左沢線・長井線も利用客が減少し、昭和63年に長井線が第三セクターに移管される。そしてついに平成8年、期成同盟会も解散し、百年越しの左荒線の構想は夢へと潰(つい)えたのである。

 ところで仮に左荒線が実現していたとすれば、鉄路の沿線や駅名はどのようになっていただろうか。私が地形図とにらめっこした左荒(妄想)線は次のようになった。

(大江町)左沢駅→本郷駅→(月布川橋梁)→(朝日町)大谷駅→(眼鏡橋梁・最上川)→和合駅→りんご温泉駅→宮宿駅→(五百川橋梁・最上川)→常盤駅→(暖日橋梁・最上川)→(杉山トンネル)→(白鷹町)大瀬駅→(大森山トンネル)→下山あゆ茶屋駅→黒滝駅→荒砥駅

 途中、上郷ダムからあゆ茶屋の間については、地質的に脆弱で川岸が狭いため線路を通せず、長い2本のトンネルで連絡する必要がある。中間の大瀬集落は小村であるが土地は広いためトンネルの中継駅として重要である。また、黒滝駅は黒滝橋の対岸側にも大きな集落があり、集客を見込める。などなど・・。高低差や地形より線路や停車駅の位置をあれこれ考えたり、断層の位置や地層の状態よりトンネルのルートを検討したり。また、実際に左荒線の列車に乗った場合の車窓からの眺めを想像したりとか。業務で得た知識やスキルが、架空の線路をより明瞭に、現実味を帯びて見せてくれる。こういう無稽(むけい)のイメージ遊びも、また一つの男の夢(ろまん)じゃないだろうか。

 

 

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