さんぽみちのちしつColumn

第11話 ~紅茶のお供に~

2021年03月31日(水) 

 ミルフィーユのように赤紫と灰白色の縞模様が美しく重なるこの石は山形近郊、長谷堂-隔間場に産する縞状流紋岩である。昭和60年頃より盛んに採掘され、造成盛土材として大量に市井に出回った。山形地区一円から寒河江西村山で山砂利といえば、この石が普遍的に用いられていたものである。私が入社した当時は小高い山であった原石山も、現在は採掘跡の平地に太陽光パネルが並ぶなど大きく様変わりし、採石自体はほとんど行われていないようである。
地下のマグマが直接の成因となる岩石を「火成岩」と云い、その内、地表近くで速やかに冷却したものを「火山岩」、中でも石英や長石などケイ酸分に富むものを「流紋岩」と云う。岩石としては全般に白っぽく明るい色調であることが多いが、ケイ酸分以外の鉱物の種類や冷え方によってはかなり暗色の流紋岩もあるため、色だけで岩種を決められるものでは無い。たとえば石器時代に多用された黒曜石も流紋岩の仲間と云えるが、その名の通りガラス質の真っ黒な石となっている。


 隔間場の流紋岩は、中新世中期(約1,300万年程前)に海底に噴出した溶岩によって生成したものだ。噴出溶岩の外殻は海水で急冷されてバラバラに砕けるが、中心核に近い部分では、漸次供給される溶岩の圧力によって流動しながら徐々に温度を下げて固まってゆく。岩石を造る鉱物はその成分によって固結温度が微妙に異なるため、流動しながら組成成分が凝集しあの見事な縞模様(流理構造)を造ったものと考えられる。溶岩の成分と温度、量と噴出速度、周辺環境のどれか一つでも違えばこの石は生まれなかった。まさに奇跡の産物である。また、流紋岩は冷却と共に規則性のある亀裂(節理)が発達し、岩質も硬質な割には割れやすい。そのため比較的容易に採掘でき、低コストで山砂利を開発・供給できたのである。


 隔間場の縞状流紋岩は日本全体を見わたしてもあれほど見事な流理模様は無い。一時期、ある方がこれを研磨・成形して飾り石して売り出そうと試みたという。だが岩質が災いして加工が難しく、コストに見合わずこれを断念したという。まぁ、山砂利として利用する立場からすれば、変な付加価値が付かず安価に利用できて良かったと言える。

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