さんぽみちのちしつColumn

第13話 ~枕を愛してる?~

2021年04月09日(金) 

写真は、今や全国区となった加茂水族館に隣接する荒崎灯台からの眺めである。日本海としては滅多に無い深い紺碧の大海原が広がり、黒褐色の岩肌に僅かに白波が立っている。いかにも磯釣り日和のロケーションであるが、「黒鯛はフカセ釣りで朝まずめが一番」などと知ったかぶりの話をするつもりは無い。一度も釣れたこと無いし・・。

注目は沿岸の岩である。表面がざらっとした岩々が、外洋に向かって伸長しそれらが規則性を持って並んでいる。また、一つ一つの岩は全体に丸っこい形状で、まるで黒砂糖を練り込んだ細長い焼き菓子のようでもある。実はこの岩、枕状溶岩(ピローラバ)という北陸~北日本の日本海側の沿岸によく見られるものであり、中新世前期、今から2000万年ほども前に海中で噴出した玄武岩溶岩の形態の一つである。こういった黒っぽい塩基性岩の溶岩は、さらっとした粘りの少ない性質で、海底に噴出して急冷され薄い外壁を纏うが、それを押し破って次々に円筒形の岩体がドロドロと「う○ち」のように押し出される。(クレヨンしんちゃん的表現😉)ハワイキラウエア火山の溶岩流による同様の映像が何度かテレビで流れた事があるので、ご存じの方も多いだろう。溶岩が海水に直接さらされた部分は破砕して波に洗われ、中心部分がそれこそ枕を積み重ねたように並ぶ事になる。また、押し出される溶岩の量が多いと一かたまりの岩塊となり、中心部から外側に節理(溶岩が冷える際にできる規則正しい割れ目)が放射状に発達した車石と呼ばれる奇岩となる場合もある。また、地中の浅いところで溶岩が地層と地層の間でゆっくり固まった岩床となると短柱状・ブロック状・板状など、様々な節理構造が発達する。旧温海町の沿岸部では場所によって様々な節理構造の露岩が次々に現れ、さながら割れ目の見本市のようである。いにしえの海底火山の様子をあれやこれや想像することができて面白い。

30年ほども前、私はとある地質見学会に参加した。その時は「チン状溶岩・ピローラバー」と教えられた。チン状?枕の偏愛者?予備知識無しで参加した私にも非はあるが、刷り込み効果のように未だに「Lover」が頭から抜けない。

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